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身柄事件の弁護活動に私選弁護人をお勧めする理由

弁護士 内藤 幸徳

弁護士 内藤 幸徳

東京弁護士会

この記事の執筆者:弁護士 内藤 幸徳

東京弁護士会 高齢者・障害者の権利に関する特別委員会委員副委員長。 祖母の介護をしながら司法試験に合格した経緯から、弁護士登録後、相続、成年後見等、多くの高齢者問題に取り組む。 また、賠償責任の実績が多く、特に交通事故は、年間200件を超える対応実績がある。 医療機関の法務に強く、医療・法務の架け橋になれる弁護士として活動している。

1 身体拘束の流れ(逮捕から勾留まで)

捜査機関は、逮捕後、引き続き被疑者を留置する必要があると判断した場合、逮捕時から48時間以内検察官に送致する手続をしなければなりません(刑事訴訟法203条1項)。

検察官は被疑者の送致を受けた後、留置の必要があると判断すれば、24時間以内に裁判官に対し、勾留状を請求しなければなりません(同法205条1項)。

すなわち、被疑者は逮捕されてから合計72時間以内に勾留されるかどうかの判断がなされることになります。

これが逮捕の期間は3日間と言われる理由です。

2 身体拘束の流れ(勾留以降)

裁判官により認められると、被疑者は原則10日間勾留されることになります(同法208条1項)。

勾留期間は最大もう10日間、延長されることがあります(同条2項)。

上記のため、裁判官により認められると、最大で20日間の身体拘束を受けることになります。

逮捕から起算すると最大で23日間、身体拘束を受けることになります。

3 国選弁護人と私選弁護人

上記のように、身体拘束を受けたとしても、勾留を阻止できれば、身体拘束期間は最大3日間で済みます。

これに対し、勾留までされてしまうと、最大で23日間、1か月弱の期間、身体拘束を受け続けることになります。

勾留が認められるか否かは、身柄事件においてとても大きな違いとなります。

ところで、刑事弁護の弁護人としては大きく国選弁護人と私選弁護人があります。

このうち、国選弁護人が選任されるためには、「勾留状が発せられている」、つまり、被疑者が勾留されている必要があります(同法37条の2第1項)。

身体拘束を受ける被疑者にとって、勾留がされるか否かは極めて重要な違いになるにも関わらず、国選弁護人は勾留された後にしか活動できないため、国選弁護人では、勾留を(令状発布前に)争うことは出来ないことになります。

これが国選弁護人の最大の欠点です。

私選弁護人は、そのような制約はありませんので、勾留状を発布すべきか否か、裁判官の判断にあたり、弁護人として意見を述べることで、勾留却下の判断を得る可能性があります

4 当番弁護士制度

弁護士会は逮捕時点において、弁護士を派遣する当番弁護士制度を設けています。

当番弁護士は原則として当日中に被疑者と接見し、そのまま弁護人に就任することもあります。

当番弁護士は、①私選弁護人となる場合と②国選弁護人となる場合があります。

逮捕段階で活動できるのは原則として私選弁護人のみですが、「刑事被疑者弁護援助制度」という制度を使えば、逮捕時にも活動ができ、勾留後は国選弁護人となることもあります。

但し、手続きが煩雑で、時間が掛かることから、私選弁護人と全く同じように迅速に活動することが難しい場合もあります。

5 私選弁護人のメリット

上記のように国選弁護人と私選弁護人の最大の違いは、逮捕時点における弁護活動が出来るかどうか、となります。

勾留が認められた場合でも、被害者との示談交渉など、時間的制約が多い中で、逮捕期間から弁護活動を開始できることのメリットは非常に大きなものがあります。

最適な弁護活動を行うという観点からは、私選弁護人が最も適していることになります。

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