
弁護士 内藤 幸徳
東京弁護士会
この記事の執筆者:弁護士 内藤 幸徳
東京弁護士会 高齢者・障害者の権利に関する特別委員会委員副委員長。 祖母の介護をしながら司法試験に合格した経緯から、弁護士登録後、相続、成年後見等、多くの高齢者問題に取り組む。 また、賠償責任の実績が多く、特に交通事故は、年間200件を超える対応実績がある。 医療機関の法務に強く、医療・法務の架け橋になれる弁護士として活動している。
1 多様な働き方の増加
近年では、多様で柔軟な働き方として、特定の組織等に属さず、独立し、自らの専門性等のサービスを提供するフリーランスへの関心が増加しているとされます。
特に、特定の発注者に依存する自営業主、雇用的自営業等は、1985年には128万人であったのに対し、2015年には164万人と推計されています(内閣府「日本のフリーランスについてーその規模や特徴、競業避止義務の状況や影響の分析―」2019年より引用)。
本稿では、フリーランスの方が目にすることも多いと思われる「業務委託契約書」について、解説します。
2 業務委託契約の法的性質
業務委託契約という言葉は法律上、定められた言葉ではありません。
仕事の完成を目的とするのではなく、行う業務の対価として金銭を支払う契約を(準)委任契約と言います。
なお、仕事の完成を目的とする契約は、請負契約といいます。
以下では、(準)委任契約について解説していきます。
3 解除に関する規定例
業務を受ける受任者側としては、できる限り長期間にわたり、契約を続けてほしいと思うのではないでしょうか。
準委任契約は①原則としていつでも解除できる②当事者の不利な時期に解約した場合には、損害賠償責任を負う③ただし、契約が受任者の利益のためにもされた場合には解除が制限される、というのが確立した法理となっています。
そのため、中途解約を制限するのであれば、以下のように、この契約が受任者である乙のためにもなされていることを明記しておくと効果的です。
本契約は、受任者をして◯◯を実施させ、◯◯を図ることを目的とするとともに、受任者にとっての◯◯を実現することを目的とする。
受任者にとっても利益となるとは、例えば、委任者の利益の一部が受任者の報酬となったり、受任者の事業の発展に資するなどの事情が考えられます。
さらに、以下のような規定を入れ、解除を取引停止・反社条項に違反するような例外的な場合に制限するとより効果的です。
民法651条の規定にかかわらず、本契約が受任者の◯◯を目的とすることに鑑み、当事者が本契約○条に違反した場合並びに当事者双方が合意した場合を除き、解除することはできないものとする。
4 結語
フリーランスは、多様な働き方が可能になる一方で、契約トラブルなど、法的紛争に巻き込まれるリスクも生じます。
弊所では、フリーランスの方への法的支援を積極的に行っております。
是非お気軽にご相談ください。