遺産分割の対象である「遺産」とは「相続時に存在し、かつ、分割時にも存在する被相続人の所有に係る未分割の財産」を言います。
相続時に存在しないといけないので、例えば①“生前に”被相続人口座から引き出された金員(いわゆる「使途不明金」)や②“相続後”に契約により発生する葬儀費用などは、遺産分割の対象である「遺産」には該当しないこととなります。
①使途不明金について争うのであれば、不当利得返還請求訴訟(民事訴訟)として、地方裁判所で争う必要があります。
また、②葬儀費用は、相続税申告の際に債務として控除できることから、よく誤解されるのですが、厳密には、遺産とはなりません(法務と税務で判断が分かれる。)。
ただし、実務では、全相続人の合意を持って、遺産として取り扱う、という運用がよくなされてはいます。
ちなみに、家庭裁判所は遺産の調査をしてくれませんし、弁護士も遺産の調査をするには限界があります。
すなわち、預貯金債権であれば、どの銀行のどの支店に口座があるということが分かれば、相続時の残高を調べることはできますが、被相続人がどの銀行に口座を保有していたか、などを調査することは困難です。
そのため、「エンディングノート」などで、自分の保有している財産の一覧を相続人らにわかるように残しておくことは、とても有意義なこととなります。